無節操な死人 ー競作 幻想都市の四季 まほろ市の殺人 春ー 倉知淳

 とあるマンションの七階。ベランダから自分の部屋を覗いていた
男を突き落としてしまったカノコ。あわてて下を見るが、そこには
何の痕跡もなかった...。時を同じくして近くの川ではバラバラ
死体が発見され...。
 「過ぎ行く風はみどり色」ではさわやかな風がふいた倉知ミステ
リ。本作では最大風速三十メートルの大風がふきます。この短さで
ちゃんと舞台の真幌市や主人公のなじみの店「クルツ」のイメージ
や登場人物達の人物像があざやかに浮かぶのはさすが。懇切丁寧に
ページを割いて説明しなくても描写力があれば情景を描き出せるの
だなあ。

 トリックは「そんなの実際ないよ〜!」って思うけど「あり得な
い」って腹が立つような感じじゃなくて「あはははは、ありえね〜」
と笑える程度の荒唐無稽さ。いいのよ。フィクションだもん。面白
かったよ。

 星3つ。