五月 新橋演舞場 夜の部 その一

 五月の半ばに観た演舞場夜の部。何故こんなに感想を書くのが遅
れてしまったのかというと、三つ目の演目、松竹梅湯島掛額が強烈
すぎてその前の二つの演目の印象が飛んでしまったのです。ようや
く五月末に出た演劇界7月の記事を読んで記憶を補填しつつ感想を
書き始めました。

 一幕目は石川五右衛門。物語も面白く仕掛けや見所満載でおすす
めの演目です。吉右衛門の主役、石川五右衛門は「これぞ歌舞伎」。
「大きさ」という観点からは團十郎幸四郎に軍配が上がるのかも
しれませんが、吉右衛門は細かいところに気の行き届いた芝居で挽
回しています。拵えも迫力だし宙乗りもあるし、ゴージャス!染五
郎と天地に決まるシーンで、なんてしっくりくる二人だろう、と思
いました。やはり叔父さんと甥っ子なので雰囲気が似ているので
しょうか。以前猿之助の五右衛門を観た時は私自身が南禅寺に行っ
た事がなかったのですが、その後海老蔵襲名を追いかけて京都に
行った際、南禅寺も訪れたため、今回は五右衛門の「絶景かな」の
台詞の所で目の前に京都のイメージが広がりました。芝居や小説の
舞台となった場所に実際行くのって楽しいです。

 二つ目の演目は福助道成寺。これも見事だったんです。私が観
た日はちょっと福助さんが疲れてる様に見えましたが、それでも見
事な出来でした。未来のスター、御曹司達が所家で並ぶのも楽しい。
前後の演目が今月ほど強烈じゃなかったらもっと印象に残ったと思
いますが、如何せん吉右衛門の五右衛門と亀治郎のお七にはさまれ
てしまって残念でした。

 その二へ続く