青年のための読書クラブ 桜庭一樹


 自分のことを「僕」と呼ぶ女性同僚がいました。特定の仲良しな女子と
は濃密な人間関係を築くけれど、男性同僚や仲良しではない女子とはヒス
テリックにぶつかりがちで、見ていて痛かった。もしかしたら彼女は女子
高出身で十代の頃に学んだ女子高的処世術をそのまま引きずっていたのか
もしれません..。

 久々にそんな昔の事を思い出してしまった桜庭さんの女子高モノ。桜庭
さんはやっぱり巧い。この想像力と創造力。膨大な言葉の引き出しから紡
ぎ出される濃密な物語。彼女が今まで読んで来た莫大な書物の濃縮された
エッセンスがほとばしる。桜庭さんの作品を読んだ時のこの満足感。ひと
つの物語の背後には百のいや、千もの文学世界が広がっているのだ。

 赤朽葉家〜でも村や旧家の時間の流れを人生の様に描いていることが面
白かったけれど、本書もミッション系の女子高の物語が面白い。女子高を
通過してゆく少女達。創立者の数奇な運命。様々な人生をほんの一時見守
りつつ流れて行く「女子高」自体の人生。学校という誰もが通過するモノ
の末路。人を通して学校を感じ、また学校を通して登場人物の運命を辿る
とても面白い物語。

 星4個。

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