ハーモニー 伊藤計劃

 登場人物の名前はラノベ調だし、クールなサラっとした文体で書かれて
いるけれど、テーマは重い。体内監視装置により人類が病気というものを
克服した世界だなんて、著者が本書を上梓後わずか二か月余りで癌により
34歳の若さで逝去したことを考えれば尚更...。

 二冊目も堪能しました。私が普段読むことが多い現代ミステリよりも創
作の度合いが高い近未来SFで、身近ではない世界観なのに不思議な程違和
感や嘘臭さがなくてすんなりと入って行けます。

 ハーモニーの副作用は、人類の行く末は、トァンはどう決断するのか、
驚愕のラストまで一気読み。読み終えたら暫く呆然。

 私より先に読まれたbeckさんが序盤の冗長さを指摘しておられました。
序盤だけではなく全体的に一作目より文章も研がれておらず、展開も練ら
れていない部分がある様に私は感じたのだけれど、もしかしたらご本人の
病状もあり、執筆と出版をとても急いだのではないだろうか。そんなこと
を考えると本当に切なくなってしまうのです。

 天国の伊藤さん、貴方の作品をもっと読みたかった...。

 星4.2個。