有限と微小のパン 森博嗣

 無事に京極以外の新刊が出ましたね。拍手〜!パチパチ。というこ
とで新刊記念企画第三弾。森博嗣です。

 本作は10冊あるS&Mシリーズの締めくくり。ラストを飾るにふさわ
しい充実の内容と厚さ(厚さ萌え)です。待ちに待った御大真賀田四
季の登場です。

 舞台は孤島ではなくテーマパーク。あいかわらずバーチャルリアリ
ティなど出て来て理系臭がぷんぷんしますが、描かれている情景や会
話は詩的で美しい。四季の存在を感じてパニクる萌絵。四季を追う犀
川。精神、知性面での追いかけっこ。四季は追い掛けて手が届いたか
と思った瞬間もう別の場所にいる。そのもどかしさ。犀川が追い付く
のを待つ四季はもっともどかしいことでしょう。このシリーズは犀川
と萌絵がカップルなのですが、本書は四季と犀川の恋愛小説だと私は
思っています。

 恋愛小説としてだけではなく、ミステリとしても秀逸。種明かし時
の快感、すっきり具合は「F」に迫る素晴らしさです。現実世界、テー
マパーク、バーチャルリアリティ、ゲーム「クライテリオン」。その
多重構造。そしてこのシリーズを「F」で始めて「有限」で終わらせる、
という美しいカタチ。そこはかとなく余韻を残す終わり方。
 
 言うまでも無く星5つです。