さよならの代わりに 貫井徳郎

 突然現れて和希に劇団の看板女優の身辺を警護しろ、と迫る祐里。
多くを語らない祐里に半信半疑な和希をよそに看板女優は殺されて
しまいます。殺人事件の真犯人は誰なのか。祐里の言っている事は
どこまで信用出来るのか...。
 劇団俳優和希の視点で物語が展開して行くのですが、和希と別行
動をとっている間の祐里の周囲にこそ面白さがあった筈なのに、そ
ちらが全く描かれていないのです。描いてしまうとそもそもの落ち
が読めてしまうからやむ終えないのですが。「祐里と連絡がとれな
い...。やっと連絡取れました。そしたら祐里はどうやら事件の
真相に迫ったみたいです。」これでは...。

 いっそ最初っから全部ネタばらしして祐里視点で物語を進めると
か...。無理があるか。やっぱりこれしかないのかなあ。スリル
やサスペンスやミステリ要素を求めるからいけないのでしょうか。
SFチックな青春小説、と思えば、それなりに面白いかも。
 
 星2.5個。(処女作のあの衝撃からどうしても貫井さんには期待
してしまうため、辛めの採点です。他の人がこれだけのものを書い
てたら星3個。)