名探偵はもういない 霧舎巧

 読者への挑戦状がついているのでそこで読み進めるのを中断して
推理するのが正しい読み方なのかもしれませんが、作者の種明かし
に身を委ねて受け身で楽しむのもアリだと思います。謎解きだけで
はなく、読み物としてちゃんと面白く出来ていますから。

 決してつっこみどころが無い訳ではないのですが、多少の欠点は
サクっと許せてしまう。霧舎巧作品はいつもそうです。何故でしょ
う?たぶん彼のミステリに対するスタンスが自然で正しく、ブレる
ことがないからなのではないかと思います。ミステリにはこうあっ
てほしい、という読者の望みを押さえていてはいるのだけれど、そ
れが変な縛りになって逆に作品をつまらないものにしてしまう、そ
ういう間違いをおかしたりしない。自分に何が求められているのか
をきちんとわかっていて、そこからはずれない。色んなタイプの作
品を書いてもこの人ならきっと大丈夫。大幅にはずすことはないの
ではないか、と思いました。
褒めすぎかな?かくいう私は最初は抵抗のあった霧舎学園シリーズ
のノリにもいつの間にかノレてます。

 星3.5個。