鴉 麻耶雄嵩

 最近綾辻行人監修の「YAKATA」というゲームをやっていました
ら、「メルカトル」ってモンスターが出てくるんですよ。そのメル
カトルにとても興味を持ちました。

 密室にもいろいろあって、施錠された部屋だけではなく、海で閉
ざされた孤島だったり雪で閉ざされた山荘だったり。本書は地図に
もない閉鎖的な村。そこに殺人事件や宗教、大量の鴉などのモチー
フがからみあいます。

 読んでいて謎の中を彷徨いました。密室トリックやアリバイ等の
謎を一つ一つ解決して最後にすっきりするタイプのミステリを求め
る人には向かないかもしれませんが、なんだか解ったような、解ら
ないような、謎の周囲をぐるぐる回っている、そういう感じを楽し
める人にはお勧めです。読んでいて頭がぐらぐらしました。その感
覚が私は非常に楽しかった。この「村」の世界観も好みでしたし。

 ひととおり最後まで読んでも結局メルカトルはいまいちとらえど
ころがないんですよ。メルカトルに興味があって本書を手にしたの
に、メルカトル本人が謎。よくわからない。ああ、こうやってまた
新たな作家にはまってゆくのか。読みたいものがいっぱいあって本
当に時間が足りません。
 
 星3.5。