十一月 新橋演舞場 昼の部 その二 後編

 昨日は勧進帳に対する思い入れを語っているだけで終わってしま
いました。ようやくここからが今回の勧進帳の感想です。

 海老蔵の弁慶は何度か観ましたが大分力みや固さがとれた様に思
います。何年か前に観た時は気負いが痛かったのですが、今回は安
心して観ていられました。二回席の五列目、花道の正面から観たた
め、引っ込みの弁慶の表情がよく見えました。やっぱりあの眼力、
迫力です。逆に言えばあのぎょろり眼力に頼らなくても「魅せる」
ことが出来るようになる、それが今後の課題でしょうか。

 対する富樫は菊之助。普段女形中心の役者さんが立役っていうの
は楽しみで見逃せません。菊之助が声張り上げるところなんて普段
観られませんから、それだけで大興奮。

 掛け合いの部分は海老蔵菊之助のガチンコ勝負。この芝居は弁
慶と富樫の力量に差があると今イチなんです。ベテラン同士か、若
手同士。実力の拮抗した二人のぶつかり合いが面白いんですね。ま
だまだ勿論お互いのお父さんコンビには叶わないのですが、これを
繰り返し何十年も演じることでどれだけ素晴らしい舞台になるか、
と将来がとっても楽しみになる舞台でした。ずーっと見続けるつも
りです。演じる方も観る方もライフワークです。