翼ある闇 麻耶雄嵩

 木更津とメルカトルのダブル探偵。どちらかが真の探偵でどちら
かは狂言回しなのか...。木更津が全てを解決し、最後にメルカトル
が引っ掻き回して混乱させる、というパターンを想像していました
が、そこまで単純ではなかったですね。

 木更津と香月が依頼人のもとへやって来ると既に殺されている依
頼人。疑いをむけた人物は次々と死体となって登場。その「おまえ
もか!」感は楽しい。探偵の推理、別の探偵がそれを否定。ページ
数的にこれが最後の種明かしだよね?と思ったら次のページでまた
しても別の見解。誰が犯人なのか、という謎よりもどちらが真の探
偵なのかという謎の方が面白かった。

 最終的な事件の犯人やトリック自体は「ふうん」という感じ。さ
して感慨もなかったです。

 シリーズものの一冊目(っていうかデビュー作)にこれを持って
くるというのがこの人の面白いところ。書き出しは「翌日、私たち
は」だし冒頭刑事との会話で「鴨川の事件以来だな。もう、半年も
前になるか。」って言っている。処女作ですよ?シリーズ物好きと
してはこういう細かい仕掛けが嬉しいところ。

 星3つ。

 ところで表紙の金色のオブジェ、あれは一体何なんでしょう?翼?