破裂 久坂部羊

 ここここ、怖いぃ...。

 医療ミスにまつわる裁判モノか。医療ミス怖いねえ、なんて序盤
思ったけれど、その怖さはまだ序の口。

 高齢化社会尊厳死安楽死の問題、薬品中毒の医師、沢山の登
場人物の誰が見方で誰が敵なのか。物語は医療や裁判の現場から政
治の世界へと怒濤の展開。ここまで言っちゃっていいのかな?久坂
部さん、襲われたりしない?と怯える怖さ。

 一番怖い佐久間。彼の思想は過激で物語用に誇張されたようでも
あるけど、妙に納得させられてしまう一面もあるのは確か。ふと納
得してしまいそうになる自分もまた怖い。

 医療ミステリではあるのだけれど、裁判シーンも読み応えがあっ
て見事。裁判が、本質を追求することからそれて言葉尻をとらえた
揚げ足取り、相手のミスつつき、になっていってしまうことの怖さ。

怖いがいっぱいの満足の一冊でした。

 星4個。