忌品 太田忠司

 「予告探偵」でドヒャー!っとビックリさせてくれた太田さんを続けて
読んでみました。ホラー短編とのことだったので「気持ち悪かったら嫌だ
な〜」とビクビクでしたがグロ系ホラーじゃなくてホッ。ヒヤっとかゾク
ゾクっと来るキレのある短編集です。

 雑誌の掲載順に並べているだけのようですが、短編集としての流れがと
ても良いです。地味目だけれど静謐な雰囲気に味わいのある「眼鏡」で滑
り出して「口紅」で少し俗っぽい方向に転んで、次の「靴」から「ホーム
ページ」「携帯電話」「スケッチブック」とぐんぐん盛り上がりを見せて
最後の「万華鏡」で失速して閉じる。きれいで読み易い流れでした。最後
にちょっとしたおまけもついて満足の一冊。

 星3.7個。

 挫折する短編集と最後まで読みきれる短編集の違いはどこにあるのかが
最近ようやくおぼろげながらわかってきた気がします。好きな作家の長篇
を漁り尽くしてしまったこともあり、短編苦手意識をなんとか克服したい
ところです。