背の眼 道尾秀介

 「オグロアラダ」恐っっ!!その言葉が何を意味するのかのあたり(か
なり序盤)がすっごく恐くてこのままクライマックスに向けてどんどん恐
くなったらどうしよう。最後まで読めるかな、と危惧したけれど大丈夫。
一番恐いのがオグロアラダでした。

 だんだん恐くなくなるからテンションが下がるかというとそうでもなく
恐さと引き換えに犯人探し、真相究明のミステリ要素が濃くなって行くの
で最後まで飽きずに読めました。肝心の「背の眼」にまつわる話が読了し
てみると案外弱くて、ちょっとこのタイトルでそれは、とも思ったけれど
破綻もなくてきれいにまとまっていたと思います。

 いただけないのが蘊蓄のつまらなさ。霊ネタも浮世絵の話も天狗伝説も
飛ばし読みしたくなる退屈さ。決してつまらないネタではない筈なんだけ
ど、どうも薄っぺらいうえに面白い切り口でもないんだよなあ...。

 でも、欠点はあるけど力作だし、デビュー作としてはとっても良く出来
てると思いました。

 星3.5個。