天帝のはしたなき果実 古野まほろ

 結論として、皆様あまりお気に召さなかったのでしょうか?まほろ。勇気
をふりしぼって申し上げます。私、若干まほらーであります!(ちょっと弱
気)と。


 大抵の小説というものは一日の出来事を数ページに、数日〜数十日を数十
ページに縮めてあります。小説やドラマというのはそういうものです。とこ
ろが、本書はそのシステムに反抗しております。

 本筋に関係あるのかないのかわからぬまま延々読まされる部員達の会話。
彼等が一時間話せばきっちり一時間分の会話が描写されています。
24(トゥエンティーフォー)っつうか、ジェイムス・ジョイスっつうか、そ
ういうことがやりたかったんだろうなあ。この作中と作外での時間の流れが
同じ、というのは不思議なトリップ感を生みます。愚にも付かない駄会話の
数々。読者の思考力を奪いながら連綿と延々と垂れ流されるペダントリーに
苛々して、ふと巻末の参考文系リストを参照したところ...。

 居並ぶPHP文庫、「さわりで覚えるジャズの名曲25選」「つい他人に話し
たくなる歴史のホント250」あ、浅っ!!そして極め付けは「辞書にないあ
て字の辞典」。ぶわっはっはっは!お、面白い...。本編よりも面白い参考文
献リストってどうよ?(笑涙)ネタかな?これ。や、もう、色んな意味で楽
しませていただきました。

 暴言を吐いてしまおう。まほろ作品の読みどころはストーリーでもトリッ
クでもなく、あの、延々連続駄会話(おしゃべり)なのだ。膨大な言葉の海
の中からトリックのヒントをちらちら探しつつ彼等の延々連続駄会話に身を
任せ、気付いたら最終ページ。で、犯人誰だったっけ?トリック何だっけ?
(笑)(かっこわらいかっことじる)でいいのである。(駄目か?)決して
結末を知り急いではいけない。あくまでも会話と同じテンポで淡々と読み進
めるべし。

 前半のダラダラ部分も後半の怒濤の謎解きもどちらも私は楽しめました。
しかしその前半と後半が馴染まない、っつうか別個の物語の様に感じるのが
残念であります。はふう。

 星3.5個。


↓↓お勧めか、と言われると微妙ですけど...。