しら菊、「狂言」を観る

人生初の生狂言


 ずっと生で観てみたいと思いながら歌舞伎にかまけすぎて何年も先送り
にしてきた狂言。5月に蜷川さんのお芝居で格好良い萬斎さんを見て萬斎
欲が覚めやらぬ時期にたまたま万作、萬斎親子のポスターを見てチケット
を衝動買いしました。


 風の音などの効果音を演者が口で言う、という前知識はありながら、歌
舞伎の「松羽目物」のイメージがあったので鼓や三味線は鳴るのだと思っ
ていましたが、今回私が観たものは楽器、お囃子などは入らず、演者の声
以外は無音でした。舞台には演者3人と後見一人。歌舞伎を観慣れた者に
は衝撃的でした。歌舞伎は化粧して豪華絢爛衣装に鬘をつけて、大掛かり
な舞台セットの中、大勢の鳴りもの、浄瑠璃に合わせて演じる足し算の演
劇。対する狂言は極限まで削れるものを削った引き算の演劇。ミニマリズ
ムの極地の様に感じます。

「滑稽さ」


 内容も歌舞伎とは随分違います。歌舞伎が「格好良さ」「哀しさ」「楽
しさ」「美しさ」等でどうだ!とばかりに観客に迫って来るのに対して狂
言は「人間の滑稽さ」を淡々と演じて、笑いたいところでどうぞ笑って下
さい。という感じ。押し付けがましくなく、楽しみ方も観客にゆだねられ
ている気がします。ガハガハ笑ったあとで「他人を笑っている人間こそが
端から見れば滑稽なのでは」と我に返らせられたりして。ふふふ、やられ
た。面白いなあ。狂言って。

 「狂言」に対する感想だけで長くなってしまったので演目、演者への感
想はあらためて。