エコール・ド・パリ殺人事件 レザルティスト・モウディ 深水黎一郎

 これはど真ん中ツボでした〜!ウルチモ・トルッコの人だよ!と言えば
覚えている方も多いでしょうか。深水黎一郎氏の美術ミステリです。

 でもね〜、読む人を選ぶと思う。「エコール・ド・パリについてもっと
知りたい」とか「スーチンが最近妙に気になるのよね」という私の様な人
ならきっと楽しめること請け合い。でも、何人いるのか?そんなミステリ
読みが。

 一筋縄ではいかない犯人当ても面白いし動機も成る程と唸るけれど、本
書の一番の面白さはそこだけ抜き出しても楽しめる様に書いたという絵画
蘊蓄。気になりながらなんとなく自分のなかで追求せずにすませてきた作
家の、時代のことが、学術的物書きさんではなく小説家の筆によって読み
易く書かれていて面白いです。

 芸術をお金にしなければ芸術家は新たな芸術を産み出す事が出来ないけ
れど、ひとたび芸術に金銭や利権がからんでしまうことによって起こる弊
害、お金持ちになってしまった芸術家が突き当たる壁、考えだしたら止め
どない芸術の抱える諸問題、考えさせられる作品でした。次作はオペラも
のだそうな。期待大!