屋上物語 北森鴻

 舞台はデパートの屋上。探偵役はうどんスタンドのおばちゃん。語りべ
は屋上に設置されたお稲荷さんの狐、とくればこれは「日常の謎」系連作
短編集かあ~、表紙のイラストもキレイな青空で殺伐としてないしね~、
と思ってほんわか読むつもりだったのに痛快な位綺麗に裏切られました。

 容赦なく人は大勢死ぬし、スッキリしなかったり後味悪かったり、な、
なんかスゴイんですけど...。胸の奥が重ーくなったよ~。

 そんな意外とヘビーでビターな作品でしたが、もちろん読者への救いも
ちゃんとあります。それは個々のキャラの魅力。うどん屋のさくら婆ぁ、
興行師の杜田、タク少年、皆過剰に来歴やエピソードが語られるわけでは
ないけれど、スッと読者の気持ちに入って来ます。ズルズル続編を書けそ
うなキャラだけど、あえてすっぱりここでキリをつけるのも潔し。

 あ~、旨いうどん喰いて~!

 星3個。