汚名 多島斗志之  (現在は「離愁」に改題されています)

 甥っ子が亡き叔母の人生を追うという「嫌われ松子」を思い出させる設
定の物語。(どちらが先かは未確認)

 追われる叔母の人生が、そこはそれ、多島さんなので松子の様な場末系
ではなく、政治的、思想的側面が盛り込まれていて読みごたえ充分。ただ
松子程感情移入出来ない藍子叔母なので、主人公が延々追いかける意味が
途中でわからなくなり、ここまで色々判明したんだからもういいじゃん、
と思ったりも...。

 人は人との関わりで人生も変わって行くものだから、男でも女でも当た
り前なのかもしれないけれど、どうも男性作家の描く「女の人生」ってい
うのは、出逢う男によって左右されて変わるんだよ、っていう切り口の物
が多い気がする。多島さんが描く自分で自分の人生を選びとって切り開い
てゆく骨太な強い女の物語が読んでみたいとふと思ったのでした。

 星3.4個。

※このタイトルがピンとこなくて、藍子は汚名を着せられたの?等と少し
悩んだのですが、今調べたらのちに改題されていました。これ改題知らず
に同じ本買っちゃう人とかいそう...。