漆黒の王子 初野晴

 あああ〜!これ、好み!

 ガネーシャのいる地下暗渠パートと地上のヤクザパートが交互に語られ
ます。まず地下パートに惹かれました。暗くてファンタジックで示唆的で
面白い。黒いのだけれど、色が無くて黒いのではなくて、黒という色を描
き出しているのです。豊に情景が浮かぶ黒さなのですね。

 ヤクザパートは若干読みづらく、冗長でごちゃついてしまった印象もあ
り、もう少し登場人物を整理した方が入り込み易かったかも、と思うし、
もしかしたら出来は「1/2の騎士」の方が上なのかもしれないけれど、私
の好みはこちらの方が数段上でした。

 じわりじわりと見えてくる地上と地下の関係、過去との繋がり、ああ、
なるほど、と思う真相。なんだかまた一人スゴイ作家さんが出て来たな!
と今後にワクワクします。

 星4.2個。