2010年4月 歌舞伎座 第二部 その一

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 夕暮れの歌舞伎座も好きでした。他の時間帯にはない情緒があります。

 いよいよ現歌舞伎座も最後となりました。私の締めくくりは皆さんより
ちょっと早めの、中旬に観た第二部です。


 今一つ好きではなかった高麗屋松王の寺子屋。先月素晴らしい筆法伝授
を観たばかりなこともあり今回はとてもすんなり物語世界に入り込めまし
た。ためまくった桜丸〜〜、桜丸ううう〜〜、にも退かずにうるりとなれ
た。芝居も良いけれど芝居を盛り上げる浄瑠璃も素晴らしいです。名演目
の影には必ず名曲あり。

 玉三郎千代と勘三郎戸浪が良かったです。二人の女でこの芝居は決まる
と思う。勘三郎って私はお岩とか政岡とか戸浪とか、女役で印象に残って
るものが多いです。玄蕃に彦三郎、涎くりに高麗蔵という豪華メンバー。
涎くりは品が良すぎか。


 平成十二年二月。

 始めて前売りを買って歌舞伎座に入った月。(幕見や国立劇場、演舞場
は経験済みだった)三人吉三菊五郎を始めて観たのもこの月。菊五郎
のかけ声の多さに「へ〜、この人凄い人気なんだ!」と思った歌舞伎素人
だったわたし。そのあまりのお嬢という役へのハマりっぷりに、これはこ
の人の当たり役で、きっとよく演るのだろうな、また観られるでしょ。と
思ったのに結局以来これが始めての菊五郎お嬢となりました。

 そう、これなんです。菊五郎吉右衛門團十郎三人吉三。私の歌舞
伎座での原点。あれから十年、歌舞伎座で素晴らしい時間を沢山沢山過ご
させて頂きました。その締めくくりがこの演目で本当に嬉しい。お嬢の艶
やかな悪さ、お坊の背徳的な格好良さ、無理矢理とも思える理屈で二人を
納得させてしまう和尚の大きさ。この黄金バランスこそが三人吉三。この
十年で最高の三人吉三だったと思います。

 おとせの梅枝も去年より良くなった。この子は大役だろうが大御所の中
に若手が自分一人だろうが、飄々といつもと同じ調子で乗り切ってしまう
のが面白い。海老蔵菊之助は初役とか大役だとピリピリ緊張してるのが
伝わって来るけれど、そういうところがない。鈍なのかポーカーフェイス
なのか大物なのか。どれにせよ、それって案外強みかも。

 藤娘と総評に続きます。