海賊モア船長の遍歴 多島斗志之

 面白かった!やっぱりモア船長の物語は素敵!!

 海外旅行も一般的ではなく、テレビやインターネットもなかった時代、
人は書物でバーチャルな旅を楽しんだ筈。小説には人を啓蒙したり楽しま
せたり色々な役割があると思うけれど、まだ見ぬ世界の冒険譚っていうの
は小説の中でも一大ジャンルだったのではないかと思います。密室殺人や
謎がなくってもいい。大人のための冒険もの、面白い!

 このシリーズを読んでいない人は幸せ者。これからモア船長と一緒に船
旅に出られるのだもの!先に私は続編の『海賊モア船長の憂鬱』の方から
読んでしまいましたが、本書はモア船長が船長となったいきさつから語ら
れますのでこれから読む方は本書からどうぞ。ハラハラ、ドキドキ、モア
船長の決断に惚れ、大満足の一冊でした。日本がこういうかたちでからん
で来るのもとても良いなあ。

 多島斗志之さんが失踪されて4か月が過ぎました。ご家族は海、山、街、
あらゆる手を尽くして捜索をされています。私はモア船長やガル3号を思
うにつけ、多島さんは海へ行かれたのではないかという思いが強くなるの
です。本書を読んでいる間、海賊同士の争いで多くの命が海に散ることが
とても辛かった。海は生れるところでもあり、還って行くところでもある
と言うイメージが強く描かれている気がして。多島さんが今もまだどこか
でお元気でいらして、またいつかモア船長の続編を書いてくれたらいいの
になあ、と願っています。

 星5個。