家族の行方 矢口敦子

 読んでる間ずっと主人公とその息子の関係性に据わりの悪い気持ち悪さ
がありました。母親のことをおばさんと呼ぶ息子も息子のことを恋人を自
慢するかの様に美男子だと言う母もものすごく気持ち悪かった。

 考えてみれば主人公親子だけではなく、明とロウ達の関係も、霊能者で
はないと言っても聞く耳を持たず息子探しを依頼してくる明の母も、靖子
と英行の安直な関係も、みな不自然でうすら寒い。ブラック。

 読んでいる間のなんだかなあ、な展開とは違ってラストは意外と感動や
希望のさじ加減なんかが普通でまとも。この不快さの後にこう来るのか、
と面白い。早見江堂から入った私は多少変でも驚かないけれど、最初から
感動、家族の絆、等のキーワードに惹かれて本書を手に取った人はどうい
う感想を持つのかなあ。

 星3.5個。