六つの手掛り 乾くるみ

 名作「イニシエーション・ラブ」と迷作「Jの神話」がド強烈すぎてそ
の他の作品があまり話題にのぼらない乾さん。しかし本書の様な軽めの短
編集や、竹本健治好きなら必読の超名作「匣の中」等幅広い作風で書ける
実力派なのだ。

 怪しいチャップリンコスの手品師が探偵役の本格心溢れる短編集。手品
がモチーフというのは泡坂さんへのオマージュなのかな。叙述も社会派も
いいけどやっぱりこういうのが好きなんだよなあ、というトリック、謎解
きが満載。図解もあるでよ。楽しめたけれど、この探偵は格好と名前が変
わってるだけで、この人自身はあまり言動や人となりが印象に残らないね。
エキセントリックな名探偵ならば印象に残る名台詞の一つも欲しかった。


 星3.6個。


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