クリプトマスクの擬死工作 上遠野浩平

 いやー、最近のことえりは「かどのこうへい」も「まやゆたか」も一発
変換してくれるので楽だわー。変換しづらい作家名を単語登録してたのは
昔話となりにけり。

 このシリーズ面白い。好き。登場人物や起こる事象はファンタジー系SF
風味なのだけれど、舞台が殺竜シリーズの様な長老がどうの魔導士がこう
のな村や谷ではなく現代日本(ちょっと未来なのかも)なので読みやすい。
 
 怪盗ペイパーカットが盗むキャビネッセンス。そして飴屋。解らないな
がらもそれを解らないということがどういうことなのかがだいぶ掴めて来
た本作。受取り手や現れる場所により変容しつつ、近づいたと思ったペイ
パーカットは捕まえられない。上遠野さんがどういうところにこのシリー
ズを落とし込むつもりなのかはまだわからないけれど結局彼らが束になっ
てかかってもペイパーカットには勝てないんじゃないかという予感。
 
 元ネタを思い出せずにストレスを感じた『赦し』の後に読んだので本作
の親切設計が染みました。千条の初登場シーンで「千条雅人はかつて脳に
損傷を受けて、(中略)頭蓋の内に演算チップが埋め込まれている。」と
いう記述。そうそう、こういう説明が欲しいのよ。忘れたと言っても脳の
どこかには記憶が眠っているのだからそれを引き出すだけのちょっとの手
助けがあれば過去作を思い出せるのだ!


 星3.9個。



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