2010年12月 日生劇場 その一(摂州合邦辻)

?H3>通し狂言 摂州合邦辻

 過去二度程観ていますが通しは初めて。なるほどこういういきさつだったのね。

 まずなにはさておき亀サブ兄貴の次郎丸でしょう!うふー!敵役良い良い!ま
だあまり歌舞伎に詳しくない頃に観た車引の羽左衛門藤原時平がとても印象に
残っています。再度観る事はかなわなかったけれど直系の孫である兄貴が敵役と
して精進してくれて将来羽左衛門に迫る時平を観せてくれたら嬉しいな、と思っ
ているので兄貴が敵役をやるのは大歓迎。出過ぎないけれどきちんと印象を残す
菊之助ともバランスのとれた良い次郎丸だったと思います。

 菊之助は貫禄が出て来ました。もともと美しかった声にも更なる厚みと深みが。
もう何度も演じているのではないかと思う程に安心して観られる玉手御前。ここ
から政岡への道はそう遠くないんじゃないかな。

 梅枝はとても美しかったけれど若干菊之助に食われ気味。玉手が俊徳丸に傾倒
することにリアリティを持たせるためには俊徳丸の匂い立つ魅力が大切だと思う
のだけれど、ちょっとその点弱かった。悪くはないのだけれど、まだ今の梅枝の
手には余る役だったという印象。じゃあ他に誰がって言われても思いつかないん
だけどね。

 三幕目の菊五郎登場の場面が凄く良かった。浄瑠璃と台詞の絡み合い方がテン
ポ良くてとってもノレました。やっぱり浄瑠璃長唄あっての歌舞伎。私は歌舞
伎って芝居よりはミュージカルやオペラに近いものだと思っているので音楽は本
当に重要。ここが寂聴、野田、蜷川、三谷等の現代歌舞伎にあまり興味が持てな
い所以です。

 達陀に続く