郷愁という名の密室 牧薩次

 するすると読んでしまい、あ、これで終わり?と思ったのですが、さらっと読
み返してみるとかなり盛りだくさんでした。密室、『七回死んだ男』を思い起こ
させるタイムスリップ、保健室の出来事、雫の存在、たねさんと主人公の物語..。

 面白かったしたねさんの切ない思いにはじんわり来ましたが、このスルリと抜
けていってしまう感というか印象に残らなさは何だろう。色々盛り込まれすぎて
読んでいて集中力がそれぞれのエピソードに分散してしまったのでしょうか。強
烈だった前作の『完全恋愛』と比べてしまうからそう感じるだけか。

 「恋人を抱きしめた」と書かれてはじめて「え!こいつらそういう関係になっ
てたの!?」とたまげたのは私だけ?先日読んだ谷原さんの砂の城~でもその手
のことで驚いたのですが、たぶん私が本を読んでいて恋愛関係に注意を払わなさ
すぎなんですね。トリックの伏線になりそうなところばっかり注目する癖がつい
ちゃってるんだなあ。

 ブルってる、とかハレンチ、とか時々おっさん臭い言葉が出てくるのはご愛嬌
ということで。^^;

 星3.6個。