琉璃玉の耳輪 津原泰水 尾崎翠原案

 昭和初期に活動した女性作家尾崎翠が映画原作として書いたものの、映画化に
は至らなかった作品を津原泰水が小説化した作品。

 浅草に出没する掏摸、阿片窟を根城とする売笑婦、変装の少年、政界の雄に美
貌の後妻、好奇座の芸人、女探偵、と登場人物一覧を読んだだけでご飯三杯食べ
られそうな好みの設定。期待に違わず昭和のアンダーグラウンドな世界が楽しめ
る良作でした。

 特に終盤のはっちゃけ具合はなかなかの見物で中盤のダレ方が信じられない様
な加速ぶり。ああ!そう!ここでこの人がこう出るの!とその登場人物の配し方
になるほどと納得。

 とても楽しめましたが、どうもすっきりしない部分というか、全体の緩急など
バランスが良くない部分があるというか、それは津原さんの尾崎さんへの敬意が
遠慮となって出てしまった部分なのかもと思いました。良いものを持ってはいな
がら映画化ならず、だったわけで足りない部分もあったということなのでしょう。
ならば原案だけ頂いてもっと大胆に津原さんのやりたい様にのびのび展開した方
が良くなったのでは、という惜しい気持ちがしなくもないです。

 星3.7個。