ミステリ愛。免許皆伝!メフィスト道場 メフィスト編集部・編

神様の思惑 黒田研二

 本格ばりばりのくろけんだけど『今日を忘れた明日の僕へ』を思い返せば切な
い話を書くのが上手い人だったのだ。断然「笑い」よりは「切ない」方が良い人
なのだと思いました。この手の内容なのにベタな方に転ばずキレのある仕上がり
なのがさすが。

人類なんて関係ない 平山夢明

 平山さんは横メルの印象があったので、エグイ内容かと構えて読んだのに意外
と読後感さわやかな一遍でした。素斗の抱える問題はとても複雑で面白いアイデ
ア。他の作家さんだったらこれで長編一冊書いてしまいそうなネタを短いお話で
スパっと使い切ってしまうところが潔いと思いました。

鎧塚邸はなぜ軋む 村崎友

 村崎さん、初読です。多田かおるとか聖千秋とか出て来るよ、と思ったらやは
り私と同世代。このミスリードの罠上手い。まんまとひっかかりました。この犯
人と同じ様なケース、私の身近に実際あったんですが思い至らなかった。

Aカップの男たち 倉知淳

 倉知さん、ぎりぎり。あともう少し長かったらきびしい。短編だからなんとか
読める微妙なテーマ。トリック自体は面白いのですが、なにぶんテーマがコレな
ので(苦笑)って感じ。

祝葬 久坂部羊

 久坂部さん、充分面白い作品だと思うのですが、このアンソロジーの中に入る
と他の印象が強いため埋もれてしまった印象。ちょっと勿体なかったか。

マーキングマウス 不知火京介

 不知火さん、すみません。これは通勤電車で読んでも話が複雑すぎて飲み込め
なかった。静かな所で集中して読まないと駄目な作品でしたよ...。無念。

 以上どの作品もスルッと読めて楽しめる一冊でした。

 星3.8個。