砂漠の悪魔 近藤史恵

 びびび、びっくりした。こここ、怖かった。唖然呆然。

 近藤さんの新境地。乾いた硬質な文体はハードボイルドの様で、あのおそうじ
キリコちゃんやタルトタタンシリーズと同じ人が書いたとは思えませんでした。
最初はある大学生の友達同士の裏切り、惚れたはれたの物語だと思って読んでい
たのに途中から信じられない展開に。

 途中何度も引き返す分岐点はあったのに都度都度進んで行ってしまう主人公に
疑問でしたが、あの結末にたどり着くためには主人公をそこまで進ませなければ
ならない。そこにリアリティを持たせるためにはもう少し主人公の感情を掘り下
げても良かった気がします。それにしても本当にびっくりした。読んだそばから
忘れて行く忘却機能の優れた私ですが本書の結末は生涯忘れないことでしょう。
近藤さん頑張った。このしんどい物語を描き切ったことに拍手。

 星4個。