朱鷺色三角 / パッション・パレード 樹なつみ

連載当時リアルタイムで全部読んでいるのに更にコミックスも揃える程好きだっ
た作品。10年程前に『捨てる技術』にハマって手放してしまい、今回超久々に図
書館で借りて再読してみたらとてつもなく面白かった。なんで捨てたの10年前の
自分ー!バカバカ!!

当初は一話目の『螢たちは笑う』単発の物語として掲載されたものの、人気が出
たためタイトルを『朱鷺色三角』と改めエピソードを追加して全五巻まで伸び、
更に続編パッション・パレードへと続くことになったという経緯のある作品。展
開に行き当たりばったり感もあるし物語も継ぎ接ぎ的。それでも一気に読ませる
この魅力。霖、零、蕾の三人のテンポの良い掛け合いは今読んでも本当に面白い

螢たち~は横溝チックな瀬戸内海の小島の旧家での遺産相続をめぐる殺人事件。
そこから何故か東京での霖、零、蕾の三人(三角)の日常コメディ的ストーリー
になり、螢子登場のあたりで若干ミステリっぽさを取り戻すものの、続編のパッ
ション~では舞台がアメリカに移り、と螢たち~と同じ作品とは思えぬ程雰囲気
もガラリガラリと変わってゆきます。

連載当時小・中学生だった私は大好きな和風ミステリ調だった朱鷺色~がいきな
アメリカン青春グラフティになってしまったことにものすごく違和感を持って
いました。今回の再読も図書館で続編までセットだから借りたけど本当は朱鷺色
だけでいいのになー、と思っていた位。

でも今読むと解るのよ、これが!霖が旧家の血の因縁からのがれて大人になるた
めに外国へ行って人種の違う人達とかかわり合うことが必要だったこと。因縁か
らのがれた霖とのがれられない零。そのことをかなり早い段階から理解していた
零の哀しさ。蕾の霖、零との関わり方自分が大人になったからこそ新たに解っ
た点が一杯あった。パッションの最終回を読んだ時は意外でショックでしたが、
今読めばかなり前から伏線が、というか彼らが最終的にこうなることは決められ
ていたのだろうなという気もする。今回の再読は朱鷺色三角の良さの再確認と
パッション・パレードの良さの発見となりました。これ、昔は霖の物語だと思っ
ていたけれど、結局零と蕾の物語だなー、という印象も強くなった。

パッションの最終話で蕾を中学校に迎えに来た零の格好良さは異常。興奮して卒
倒するかと思いました。最近少女漫画にはすっかり飽きて『20世紀少年』とか
医龍』とか『もやしもん』とか青年漫画にばかりハマっていたけれど、あの零
を見たらやっぱり少女漫画じゃないと!と思う。男性漫画家の描くヒーローはい
くら格好良くても女性漫画家の描くヒーローの格好良さとは根本的に質が違う。
オッチョや朝田で卒倒は出来ないもんね。

基本的にこの物語の女達は皆哀しいのね。ガヴィに画廊の奥さん。霧江もか。皆
零が大好きなのにね。霖の母の最期も切ないしなあ。坂本露子が螢子に島へ来る
かと語りかけるシーンは今まで全く印象に残らなかったけれど今回の再読では強
く響きました。何があっても一人変わらず島に残り家を守り続ける女...。

登場する人々が皆金持ちなことには驚きました。二十代のフリーライターが豪邸
の様なマンションに住んでるし。ガヴィの家もグイドの家もジューンの実家も超
豪邸。でも当時は違和感なかったの。日本が一番豊かだった、そして更に豊かに
なることを信じて疑わなかった時代だもの。

これとCIPHERと月の子が同時期に連載されてたんだものなー。贅沢だったな、当
時のLaLa。次はCIPHERの再読かな。(これはさすがに手放せなくて取ってある)

皆さんも!昔好きだった漫画を今読み返すと面白いかもですよ^^

星5個。

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コミックス版は古書しか流通していない様子なので文庫版。
でも零の美しさを味わうには文庫は小さすぎる。
この表紙絵は当時から凄く好きでした。




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この絵はあんまり思い入れないなー。
わたし零派だし...。





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←ついったー
ツイッターで本作品のことをつぶやいてる方がいらして
今回の再読となったのでした。


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読書メーター
漫画、実用書はつけてません。小説のみ記録中。