散りしかたみに 近藤史恵

 面白かった!種明かしでびっくりしました。「二人道成寺」より
は伏線がピタリと収まるところに収まり、動機に成る程、とうなり。
という点でミステリ的満足度が高いです。歌舞伎の演目が単なる装
飾ではなく、ちゃーんと伏線になっています。舞台に花びらが散る
情景もとても美しい。

 歌舞伎には、残念ながら通好みで初心者にはおすすめできないな、
という地味な演目もたくさんあるんです。でもこの物語に出てくる
演目は、「廿四孝」も「政門」も「鏡獅子」も「怪談乳房榎」も全
部オススメです。面白いものばっかりです。その演目のチョイスに
著者の、「歌舞伎大好き!皆さん!歌舞伎は楽しいものですよ!」
と伝えたい気持ちが詰まっていると思いました。歌舞伎をからめよ
うと無理してる様子がありません。歌舞伎を書きたい気持ちがほと
ばしり出た、という感じです。

 ここ二か月位歌舞伎を観てないんですが「歌舞伎観たーい!!」
と思いました。

星4個。

 余談ですが、「本朝廿四孝」は私が初めて生で観た歌舞伎です。
海老蔵(当時新之助)の白須賀六郎が格好良かったのに出番が数分
しかなくて、この人もっと観たい!と思ったことが歌舞伎にはまる
きっかけでした。