ターネーション

 本でも漫画でも映画でも、私的ノンフィクションはフィクション
以上に作者の表現力が試されます。事実をそのまま垂れ流しても人
は共感したり、楽しんだりはしてくれません。本作の様にテーマが
重い場合は特に。

 私的ドキュメンタリーといえども、単なる日常の切り取りではな
く、きちんと作品として作り込んであります。彼が映画的な半生を
送ってきたんだ、と言ってしまえばそれまでですが、私は表現する
ことと真摯に向き合って作者が日常を作品に仕立て上げていると思
いました。どうやってこの内容に結末をつけるのかと危惧しました
が、上手にキレイに最後をまとめています。

 でも彼の周りの人は辛いでしょうね。彼は作品にすることで何か
を消化出来たのかもしれないけど。事実、作中で何度も「撮らない
で」という言葉が出てきます。「撮らないで」を観ている赤の他人
の自分が痛いです。アドルフの現実からの目の背け方も痛い。それ
ほど長くはないのですが、とっても疲れました。映画館寒いし。
(寒い事は予期して行ったのに、想像を超えて寒かった。)