蛍 麻耶雄嵩

 麻耶氏による館ものです。
 京都の山中に建つ「ファイヤフライ館」。前の持ち主であるバイ
オリニストの加賀蛍司が大量殺人を行った曰く付きの館。そこへオ
カルトスポット探検サークルのメンバー達が合宿に出かけます。嵐
の山荘で彼らを試すかのように第一の殺人が...。
 読んでいる最中は「なんだ、簡単じゃん。こことここがが鍵で
しょ」と思っていました。「今回は小粒だなあ」とも。でも読了か
ら一時間、二時間と時間が経つにつれてじわじわと本書の凄さがわ
かってきます。すぐ読めてしまう鍵。そこは読めてあたりまえだっ
たのです。麻耶氏の真意はもっと深いところにあった...。

 読者さえも置いてけぼりにする麻耶氏の大胆な試み。ミステリの
根本目的を逆手にとって仕掛けられた麻耶氏の罠!そしてお得意の
大落ち...。

 最後の一文を読み終わって本を閉じる、そんな普通の行為さえ麻
耶氏はさせてくれません。こちらが読み終わる心の準備が出来る直
前に物語の方が閉じてしまうのです。残された方はやり場のない気
持ちを抱えたまましばし呆然。でもとっても鮮やか。

 ごちそうさまでした。堪能いたしました。良い仕事してますねー。

 星4.5個。