生首に聞いてみろ 法月綸太郎

 モヤモヤした抽象画だと思っていた表紙の絵がよく見たら実は怖
かったです。気づかずに通勤電車内でカバーもかけずに読んでまし
た。私が立ってる前の席に座っていた方、すみません。朝っぱらか
ら。

 彫刻家、川島伊作が病死。アトリエからは遺作となった娘、江知
佳がモデルの石膏像の首が持ち去られていた。伊作の回顧展を準備
していた会場には謎の小包が届く..。

 お見事。さすが〜。読みごたえがありました。ミステリマニアを
騙そうとするあまり、奇をてらった美しくないトリックや推理に
なってしまう作品も多々ありますが、本書は派手な騙しや「こんな
ん分かるかっ!」ていう意地悪なトリックがなくて、丁寧にいくつ
もの謎が解きほぐされて行くのが快感でした。さすが法月さん。伊
達に濃い顔じゃありません。(それは関係ない)決して良い後味で
はないのですが、その後味の残し方も巧いです。嫌な気分を引きず
る程ではないけど、ちょっと引っかかるその具合が絶妙。

 彫刻のお話も面白かったです。「彫刻で表現出来ないもの」は、
なるほど〜。そうか〜、と思いました。私は絵は描くけど立体は
やったことがないのでとても意外な話でした。まさに盲点。彫刻家
はそこのところで悩むんだ...。

 星4つ。