今日を忘れた明日の僕へ 黒田研二

 カティさんとゆきあやさんが立て続けにクロケン記事をアップさ
れました。何ですか?五月はクロケン祭りですか?それならば応援
団の一員として私も神輿を担がなきゃいけませんね。

 ふんだんに張り巡らされた伏線とラストのたたみかけるような怒
濤の種明かしが印象的なクロケンですが本書はめずらしく、動機が
印象的でした。それが殺人に結びつくほどの事かどうかは別にして、
そのことに憤る気持ちにスポットを当てたことはとっても鋭いと思
いました。

 事故を境に記憶を蓄積出来なくなってしまった男の物語です。彼
の自分探しだけでもストーリーが出来てしまいそうなのにちゃんと
殺人事件が起こってその設定ならではのトリックが用意されている。
そのへんは「霧の迷宮から〜」と少し似ているかもしれません。
「設定負け」していないんですよね。はじめに強烈な設定ありき、
で殺人事件が後付け、「ミステリにするためには殺人事件が起こら
ないとね」的になっていないところが良いです。クロケンにしては
ややこしくないですし、クロケン作品をはじめて読む人にもなかな
かおすすめの一冊です。

 星4つ。