方舟は冬の国へ 西澤保彦

 久しぶりの西澤保彦。偽装家族モノですが、社会派的ではなくSF
風の味付けが施されています。

 予想を超えた面白さでした。西澤さん得意の荒唐無稽なありえな
い系の物語です。「ありえない系」とか「ホロリ系」とか、いかに
も自分が嫌いそうなジャンルなのですが、とっても楽しめた。何故
でしょうね。重く、哀しくなりそうなテーマを軽いタッチで読みや
すく仕上げていて、それが成功しています。軽さが空回りしていま
せん。謎解きという程でもない軽い謎解きが定期的に挟まれ、スル
スル読んでいくうちにいつのまにか登場人物に思い入れていました。
楽しませようとか感動させようとかキャラに思い入れさせようとか
押し付けがましくないのが良いのかも。終盤は中断出来ずに一気読
みしました。巧い。巧いです。西澤さん。

 星4つ。