夏の夜会 西澤保彦

 本書の前提である「記憶の不確かさ」を受け入れてしまうとそれ
こそ推理もへったくれもありゃしません。推理を組み立てても組み
立てても次々覆されてしまう前提。これは犯人当てをしようとはせ
ずに、小学校の同級生が大人になって思い出話をしている、そんな
ひとときを描いた物語、というスタンスで読めばいいのでしょう。
登場人物達の会話に身を委ねて、自分ではあまり考えずに受け身で
読むのが面白いと思います。「それ、ずるい」とか言ってはいけな
いんですね。

 逆に「事実は確かなものとして公平に提示されなければならない」
という前提のミステリへのアンチテーゼ?(使い慣れない難しい言
葉でいまいち使い方が合っているかどうかの自信がありません)と
してその実験的作風を楽しむべし、といったところでしょうか。

 せっかくの面白い試みですが、登場人物の名前がややこしくてそ
こで脱落寸前でした。結局井口先生しか名前覚えられなかった...。
ハリポタもそこのところで挫折します。誰か登場人物の名前を覚え
る秘訣を教えて下さい。

 星3個。