希望 永井するみ

　そっちいっちゃったかー。と言う感じ。そこそこの水準のものを定
期的に発表している割にいまいちブレイクしないという印象の永井す
るみ。本書「希望」は刊行当初結構書店で平積みになっていたし、
「そろそろ彼女、来るんじゃないのー？」と思って手に取ったのです
が。
　
　少年犯罪がモチーフです。前半はちょっと面白かったけれど、だん
だんと物語は少年の周辺から、少年の母親を担当している美人カウン
セラーの内面へと移ってしまいます。永井するみが本書で描きたかっ
たのはカウンセラーなのでしょうか？それにしては少年犯罪や編集者、
刑事などいろいろな人の抱える問題を描き過ぎて、「要するになにが
書きたかったのかな？」という感じ。ラストも、これで「希望」って
のはベタすぎです。もしかしたらカウンセラーに感情移入出来なかっ
たのが色々ケチつけたくなる要因なのかも。カウンセラーが魅力的だ
ったら彼女をとりまく人達の内面も散漫な印象にはならずに彼女の視
点で読めたかもしれません。

　それでもちゃんと最後まで読ませてしまうところが永井するみの優
等生的実力。本当は多少物語の論理などが破綻していても魅力的な
キャラクタが描ける人の方が最終的には強いんですけどね。結局本書
で一番魅力的なキャラクタである少年は直接の出番が少ないし。

　もうちょっと面白くなりそうなのに。という印象がぬぐえません。
残念。星2個。