匣の中の失楽 竹本健治

 いやあ〜。驚きです。これを若干21歳で書いたって言うんだから
竹本健治ただものではない。

 虚無への供物の影響を色濃く感じるけれど、さすがに20年後に書
かれただけあって虚無より随分読みやすいです。現実と虚構が入り
乱れて、何を信じていいのか、この人の死は現実なのか物語世界な
のか。足下がぐらぐらするような目眩感。いいよ〜。この「わから
ない」ことの愉しさ。なんだよその論理〜!という登場人物達の推
理合戦も飽きさせません。

 当時若干21歳の竹本青年。広げた大風呂敷をきちんと畳んでいる
のがエラい。もっと若さで押し切ってメタメタに収集つかなく終わ
るんじゃないかと思ってました。

 星4.5個。