匣の中 乾くるみ

 竹本健治の「匣の中の失楽」へのオマージュとして書かれたとい
う本書。オマージュ、というかパロディというか。これモトを知ら
なくても楽しめますね。面白かった。モトやオオモト(「匣の中の
失楽」自体が「虚無への供物」へのオマージュであるからしてこう
いう言い方になりました)にはない分かりやすさ、とっつきやすさ
もあるし。

 竹本作品は華麗なる蘊蓄が毎回楽しみなのですがそっちの方はイ
マイチでした。一応陰陽五行の話などが出て来ますが退屈。竹本健
治だと自分に興味のない分野の蘊蓄でも楽しいんですけどね〜。な
んでだろ。

 竹本氏が本書について聞かれた際に「何でこれパロディという形
にしちゃったのかなぁ。全くのオリジナルで書けば、ああいう形で
なく、ちゃんと自立した作品になるアイデアもあるし、なんか勿体
ないなぁって気がしました。」と仰っていて、確かにごもっとも、
と思いました。

 星3.8個。