愚行録 貫井徳郎

 一家惨殺という凄惨なテーマながら、被害者を知る人物達への
インタビューという形式で淡々と進む物語。被害者が妻も夫もやな
奴で、誰が犯人でもおかしくない。全員一回ずつ刺したんじゃね?
なんて思ってしまった。

 わかりきった展開でぬるいなあ。本書の楽しみどころはどこなん
だろう。貫井は本書で何を書きたかったんだろう、と考えてみると、
本書に描かれている程度の妬み嫉み、やっかみ、恨み、なんて今も
昔も案外そこら辺にころがってる。それがこういう形で犯罪に結び
ついてしまう。現代の凶悪事件の犯人の気持ちの「沸点」の低さが
リアルにイマドキの温度なんだな、と思いました。20年前には絶対
出て来なかったタイプのこの「ぬるい感じ」が読みどころ?ヒヤッ
と来るオチも巧い。

 星3個。