青空の卵 坂木司

 いいじゃないですか~。

 一つ一つの物語もね、ホロリときたり、はっとしたり、良いので
す。歌舞伎役者も出て来るし。

 でも、それ以上にこの全編通して根底にあるテーマが良かったで
す。このテーマ、くろけんの作品にもありましたね。引きこもりの
鳥井や目が不自由な塚田と上から目線ではなく対等に接しようと努
力する主人公「坂木」。ストリートチルドレンのプライドを傷つけ
てしまった経験を持つ隆之...。

 子供の頃病弱だった人などは経験があるんじゃないかと思うので
すが、同級生の「保護してあげる、助けてあげる」という労りと優
しさの蓑にかくれた上から目線。あれって悪気はないとわかってい
てもムッとするもんなんですよ。

 日本人って「敬語」がある言語のせいかもしれませんが、人間関
係に上下をつけてしまいがちで、上手に対等な関係を築くのがとて
も下手な気がします。そこに日頃憤っていた自分としてはとても興
味深く読めるテーマでした。
 
 星3.8個。