凍りのくじら 辻村深月

 うお~。やられた。これは凄い。

 辻村さんは「痛い」人を描くのが巧い。若尾君の痛さは、まあ、
想定の範囲内ということでさておき、主人公理帆子はホントに痛
かった。10代の頃の自分を見ている様で読んでいられない痛さで
した。

 その鋭い切り込み方やモチーフとしてたびたび登場するドラえも
んに気を取られている隙に、あ、そこかよ!って部分でひっかけら
れました!終盤の泣かせ技も鮮やかで見事。一瞬最悪の事態を想定
して先を読むのが辛くなってしまい30分程読むのを中断。気持ち
を落ち着けてからラストを読みました。家政婦多恵のキャラも秀逸。
こういう登場人物を一人作り出せればその小説の成功は半分決まる
と思う。

 星4.2個。