欲しい 永井するみ

 私の中ではどうしても「枯れ蔵」のイメージが強くて「真面目で
地味なミステリを書く人」という印象が拭えない永井するみ。本作
は不倫やら出張ホストやら美しい顔のDV夫なんかが出て来ていつも
より崩れ感&場末感あり。

 登場人物それぞれの「欲しい」に着目しながら、最終的に誰が善
で誰が悪なのかを考えながら読んでいたら中断せずに一気読みして
しまいました。大きなキーとなってくるある登場人物の考え方には
恥ずかしながら「この発想、ちょっと鋭いな」と感心してしまった。
いいえ、駄目ですよ。真面目に着実に生きてゆくのが一番なんです
よ、と建て前では思いつつも、受験戦争と就職氷河期で努力があま
り報われなかった世代の私としては、このシステムの社会でこうい
う考え方の人が何パーセントか発生してしまうのも仕方ないわな〜、
と思ってしまうのでした。

 大きなお世話ですが「するみ」って名前はどういういきさつでつ
いたのでしょう。この「まほろ」のはしりみたいな名前が作品世界
となじまない、と以前から気になっています。

 星3個。