占星術殺人事件(改定完全版) 島田荘司

 言わずと知れた島荘のデビュー作。某推理系漫画にトリックをパクられ
たことでも有名ですね。

 昨年自分の中での御手洗ブームが最高潮だった時に再読候補の筆頭にい
た本書ですが、持っている筈の文庫が例によって見当たらず(暗闇坂も再
読したいのに出て来ない。どーにかしたいよ、おいらの整頓能力の低さ)
図書館で借りるか古本買うか、と迷っているうちに改定版が出ました。

 初読時はとにかくあのアゾートのトリックばかりが強烈で印象的でした
が、さすがに二度目は細部までよく練られていることが解りました。時代
設定、状況設定、道具立て、全てが必然できちんと納得ゆく理由の上に立
脚している。さすが長年読まれ続けた名作。切ない余韻も的外れな方向に
邁進してゆく石岡君も良いなあ。そしてね、やっぱり。我らが御手洗。新
しめの作品ではすっかり偉くなっちゃって周囲から一目おかれている存在
の御手洗探偵は初期の鬱々でグダグダの頃の方が魅力的。今更だけど、こ
の頃はまだコーヒー飲んでいますね。初読時はそういう小ネタもわかって
なかった。

 知ってて読んでも感心してしまうこのトリック。底本の全編に流れてい
た(様な気がする)古臭さが一掃されてスッキリ読み易くなった改訂版で
読み継がれて行って欲しい名作です。

 星4.5個。