生ける屍の死 山口雅也

 「奇偶」以外は挫折続きで最近たけたけさんとも「覚悟を決めて挑まな
いと読了できない」と意見の一致を見たど~も読みづらい山口作品。挑ん
でみました!ミステリ好きを自認するものとしてこれだけはおさえておき
たい「生ける屍の死」。最後の最後まで「ほんとにこれ面白いんかいな」
と半信半疑でしたが...。

 いやあ~!面白かったです!面白かった、というか、好きです。意外な
トリックが、とか緻密なロジックが、とか、(もちろんロジカルな部分は
この作品の大きな魅力なのですが)私はそういうことよりも様々な人達の
思惑が複雑に絡みあった動機とラストの文学的で哲学的な美しさにシビれ
てしまいました。

 死者が蘇るという、ファンタジーとしては趣味が悪く、ホラーとしては
目新しくもない荒唐無稽設定をここまでミステリとして、またナンセンス
文学として、大人のための寓話として昇華させたことも凄い。疾走する霊
柩車、滑る棺桶、頭に浮かぶイメージはThe Whoロックオペラやカート
ヴォネガットスラプスティックSF。翻弄されるトレイシー警部も良かっ
たです。やっぱり私は多分山口作品が好きだと思います。ああ~~、がん
ばって読んで良かった。

 星4.2個。