大誘拐 天藤真

 ゆきあやさんのオールタイムベストで10位を受賞した本書。30年前刊行
の作品で、作者はウチの親よりもず〜っと年上。(ウィキペディアでプロ
フィール見たら東京帝国大学卒だし)面白くても古臭さは否めないだろう
な〜、と思いましたが、びっくりする程古臭くないんですよ〜!

 人生の最終目票はイカシたバアさんな私ですもの。こんなにカッコ良い
おばあさんが出て来るだけで高ポイント。もう、この刀自の機智に富んだ
お言葉の数々には目からウロコが落ちまくり。すべてがなるほどな〜!で
した。

 そんな魅力的な人物を描いているのにその魅力に作品がおんぶしていな
いのも驚き。誘拐犯、刀自組と警察、マスコミ組との攻防、知恵比べ(比
べ、とはいえ圧倒的に刀自が上を行っているのだけれど)はスキがなく細
部まできっちり作り込まれていて読みごたえ十分。本が「読み捨て」では
なかった時代に育った昔の作家って真面目..。隅から隅までどこにも「書
き流してる」箇所なんて見当たらない。

 と、まあ、この位までは。ゆきあやさんが10位に推す作品ですから。想
定の範囲内。驚きは最終章。終盤先も見えて来て、すっかり「あ〜、面白
かった」な終了気分だったところにまた刀自の見事な采配が炸裂。もとも
ととんでもなくIQが高いであろう刀自。その素地に80余年の人生経験が加
わり、そりゃもう警察も誘拐犯達もかないっこない。ハイパー刀自に、参
りました!

 星4.2個。