蝶 皆川博子

 うひは〜。凄かった。凄まじく濃い。お酒に例えるならトロリとした芳
醇で濃厚な甘さの貴腐ワインか。

 私は小説読みで、ノンフィクションもたまに読むけれど詩集は全く読み
ません。言葉は少なくなればなるほど難解になってゆくので薄くて余白の
多い詩集って自分の想像力をフル稼働させなければならず、物凄いエネル
ギーを使って読んでもいまいち良さがわからないまま終わったりするとと
ても疲れ、息抜きや娯楽の域を軽く越えてしまうのです。

 本書は詩や歌からインスパイアされて書かれた短編集。もともとの詩を
書いたのはハイネや西條八十であっても広がる作品世界は皆川節炸裂。重
く怪しく嘆美で哀しい。そんな物語の間に挟まれると、詩読み下手の私に
とっては不親切な言葉の繋がりでしかなかった詩歌達が、旋律と色彩を得
て踊り出します。これぞ皆川マジック!

 個々のお話の感想までは書きませんが、ある物語を読みおわった際、と
ても動揺して意味も無く立ち上がってウロウロ歩き回ってしまいました。
たぶん脳内で処理出来るキャパを越えたのでしょう...。歪む〜。

 星4個。