日本殺人事件 山口雅也

 フスマ・パネルでハオリ・ジャケットで腹かっさばいてシンジュー・パ
ニック!カコーン。(←ししおどし)


 現代の日本でありながらオイランが闊歩する、外国人が日本を舞台にし
て描いた物語を山口さんが翻訳したという設定のお得意、パラレルワール
ドもの。そのスラプスティックなナンセンスワールドに身を浸すもよし、
和モノが好きなら小ネタを楽しむもよし、色々深読みするもよし。ストー
リーとトリックを追うだけでは勿体ないトンデモ世界の物語。

 分量的に一番長い「不思議の国のアリンス」←このタイトル。(^^;)
がメインなのかもしれないけれど、私はその前後の「侘の密室」と「南無
観世音菩薩」が面白かった。この禅問答の様なやりとりはそのまま「ミス
テリとはなんぞや」「小説とはなんぞや」という問いかけにも通ずるので
は。(言い過ぎか?)

 死者が甦ろうと、サイコロの目がありえない揃い方をしようと小説世界
で起こった事象はそのまま受け入れれば良いのである。しかし、パラレル
ワールドという前提条件で山口さんは「ありえね〜」な世界を読者に受け
入れさせることに成功したけれど、その不思議を受け入れてしまうと、そ
もそもトリックの不思議すら当たり前で、不思議ではなくなってしまう。
そんなパラドックスに禅問答で斬り込んだ。(のか?)なんだか悟った様
な悟ってない様な。

 ああ、やっぱり山口さんは一筋縄ではいかないっしゅ。

 星3.9個。