トスカの接吻 オペラ・ミステリオーザ 深水黎一郎

 あまり周囲では話題になっていないけれど、最近のメフィスト系作家の
中ではかなり気に入ってる深水黎一郎。ウルチモの時は「ふ〜ん、まあま
あかな」レベルの感想だったけれど二作目の美術ミステリがとても良かっ
た。満を持して三作目は二作目と同じ芸術フリークの瞬一郎と伯父の海埜
刑事が挑むオペラミステリ。

 島田雅彦を読む時もいつも思うのだけれど、自分にオペラの素養がない
のが惜しい。読みながら頭の中を曲が流れたら楽しめるだろうにな〜。前
作「エコール・ド・パリ殺人事件」は私の得意分野のため作家名が出て来
れば脳内に絵が浮かぶのでスルスル読めたのだけれど、今回はオペラ部分
で若干苦戦しペースダウン。基本的な名作十選位はCDを常備しておきた
いものだ...。

 ミステリ的には前作の方が面白かったかも、だけど、芸術分野を扱った
小説としてとても楽しめるし考えさせられます。絵画は自分一人で描いて
「これが芸術だ」と言ってしまえば成り立つアートだけれど舞台芸術は大
勢で作り上げて興行として成立させなければならないので大変だ...。

 キャラも徐々に立って来て、どうやらシリーズ探偵になりそうな予感。
早く次が出るといいなあ。この二人のアート系ミステリもっと読みたいで
す。

 星3.8個。